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コラム
2002 Vol. 8 PDF 版


1991 年建造のケープサイズバルカーが昨年南アフリカで鉄鉱石を積んで (Alternative Loading) インド洋に入ったとき荒天に遭い、強い横波を受けて No.1 Hold の外板を損傷、乗組員による応急手当により航海続行、シンガポールでクラスもアテンドして temporary repair 、その後カーゴクレームも無く無事日本で Unloading しました。その後フィリピンで Permanent Repair 施工、本船はその後 Class Recommendation はありませんが、保険会社が船体補強を要求し、結果的に Holds 内の Bulkhead を新替えするという大工事を施工します。

この年には類似の海難が他に2件ありましたが何故か詳細は公表されません。船主、傭船者、荷主、Class 、保険会社等関係者の思惑が交錯し、闇に伏せられるのでしょうか? その原因が船舶管理 (ソフト) なのか本船強度 (ハード) なのか ... 。大型船の事故は保険会社にとって当然関心事でありますが、Class No Recommendation であっても保険会社の要求のほうが強いのが実態ならば、船主にとってたまりません。

最近の SOLAS 要求の VDR 等も船主負担となりますが、今回 IACS (NK) が規制する No.1 と No.2 Hold 間の Bulkhead 、No.1 Tank Top 補強は甚大な費用が掛かります。この規制が発表されるまで、IACS と船主の間で長い間争議があったとも聞きますが、 "船主" 代表は誰だったのでしょうか? BIMCO かな?


こうして毎年大きな海難事故が発生するごとに新しい規制が発行され、それが船主負担になっているのが実情です。海難を防止する為に船体構造を補強したり、VDR を装備するが Primary Measure とは思えません。船舶管理の向上 (この点 ISM が実効あがっていると観ます) 、又、荒天時の出航規制、退避等のソフト面を強化するほうが効果的と判断します。荒天時の波、風はさほどにダイナミックで、一方机上のアカデミックな計算では対応できるものではありません。因みに RORO / Passenger Ferry にか係る SOLAS 規定も、海難事故がある度に規定強化をしてきたが、強化をしすぎて世界のフェリー業界が採算的に成り立たない事態が起こり、規制を軟化させた経緯もあります。ハード面だけ押さえてもソフト面がより重要だと判断されます。

上述ケープサイズバルカーの実例を考察するに、新造船設計の時点より問題が内在しているように思われます。経験工学の中で造船所作成が設計し、Class も承認し建造され、就航されますが、船舶の前部に事故が多発し、IACS がこれを是正しようとしているのではないかと、穿った疑惑を持つものです。かかる疑惑を保険会社も持っているなら黙ってはおられますまい。

今後 150M 以上の新造船船価は、造船所はその分値上げの理由にするでしょう。傭船者は用船料でその分を吸収することはしないでしょう。保険会社はその分保険料を減らしてはくれないでしょう。融資銀行はその分金利低減もしてくれません。これらの関係者の因果関係は、いわば "仁義なき戦い" 、造船・海運市況は沈みつ浮きつなどの環境で年々船主負担が増加する傾向があり、船主は神様にすがる他ありません。

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